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ユーザーインタビューの進め方5ステップ|本音を引き出す質問例50選を徹底解説

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ユーザーインタビューは、数値では見えない「なぜそう行動したのか」を本人の言葉から引き出す定性調査です。しかし実際に始めようとすると、「誰に何人聞けばいいのか」「どんな質問をすれば本音が出るのか」「集めた発言をどう分析すればいいのか」で手が止まってしまう方が大半です。

本記事では、目的設定からリクルーティング、質問設計、当日の進行、分析・レポート化までを5つのステップに整理し、そのまま使える質問例50問とNG質問の書き換え例まで一気通貫で解説します。

BtoB/BtoCそれぞれの使い分け、UXリサーチの研究知見にもとづく「適切な人数」の考え方、生成AIの活用プロンプトまで含めた実務向けの決定版ガイドです。読み終えた時点で、自社だけでインタビューを設計・実施・分析できる状態を目指しています。ぜひ参考にしてください。

著者:Interviewz編集部(運営:LEARNERZ株式会社)

本記事は、ヒアリングDXソリューション「Interviewz(インタビューズ)」を提供する株式会社LEARNERZの編集部が監修しています。

Interviewzはこれまでに数多くのBtoB/BtoC企業の顧客ヒアリング・ユーザーリサーチを支援し、リード数268%向上、ヒアリングコスト90%削減、サポートコスト半減といった成果を実現してきました。

本記事は、実際の支援現場で蓄積したノウハウと、定性調査・UXリサーチの一般的な実務知見をもとに構成しています。

ユーザーインタビューとは?目的とアンケートとの違い

まずは「ユーザーインタビューとは何を明らかにするための手法なのか」という前提を揃えます。ここを曖昧にしたまま進めると、アンケートで足りたはずの問いにインタビューを使ってしまい、時間もコストも無駄になります。

ユーザーインタビューとは「行動の理由」を一次データで取る定性調査

ユーザーインタビューとは、製品やサービスの利用者(あるいは見込み客)に直接対話形式で質問し、行動の背景にある動機・判断基準・感情を言語データとして収集する定性調査手法です。

アクセス解析やアンケートが「何人が・どれくらい・どう動いたか」という事実の量を捉えるのに対し、ユーザーインタビューが捉えるのは「なぜその行動を選んだのか」という意味と文脈です。

たとえば「料金ページの離脱率が62%」というデータは、離脱が起きている事実は教えてくれますが、その理由は教えてくれません。実際にインタビューすると「金額そのものではなく、自社の使い方だといくらになるのか計算できなかった」という発言が出てくることがあります。ここまで分かって初めて、値下げではなく料金シミュレーターの設置という正しい打ち手にたどり着けます。

この「打ち手の解像度が上がる」点こそが、ユーザーインタビューの最大の価値です。

アンケート(定量調査)との違いを比較表で整理

ユーザーインタビューとアンケートは対立する手法ではなく、役割の異なる補完関係にあります。違いを整理すると次のとおりです。

比較項目 ユーザーインタビュー(定性) アンケート(定量)
取得できるデータ 言語・体験・感情・文脈 数値・割合・スコア
主な目的 背景理解・深掘り・仮説生成 傾向把握・比較・仮説検証
サンプル数 少数(5〜30名程度) 多数(数十〜数千名)
強み 潜在ニーズ・本音の発見 客観性・再現性・統計的裏付け
弱み 一般化しにくい・工数が重い 想定外の発見が出にくい
1件あたりの所要時間 30〜90分+分析工数 3〜10分
向いているフェーズ 課題探索・企画初期・改善の原因究明 優先順位づけ・効果測定・定点観測

実務では「インタビューで仮説をつくり、アンケートで裏付ける」という順番が王道です。逆に、すでに仮説が固まっている場合は「アンケートで傾向を把握し、外れ値や意外な回答者にインタビューする」という順番が効率的です。

ユーザーインタビューで得られる4つのビジネス成果

ユーザーインタビューを実施する目的を、具体的なビジネス成果の観点から4つに分解します。目的を1つに絞り込むことが、後工程すべての精度を決めます。

成果1:表面化していない潜在ニーズを発見できる

ユーザーは自分の課題を正確に言語化できるとは限りません。「特に不便はない」と答えた方が、実際の作業手順を再現してもらうと毎回3つのツールを行き来していた、というケースは珍しくありません。

行動を時系列で語ってもらうことで、本人も自覚していなかった非効率や我慢が可視化されます。これが新機能や新サービスの起点になります。

成果2:開発の優先順位を根拠を持って決められる

機能要望は放っておくと数十件たまりますが、そのすべてに着手はできません。インタビューで「その課題が発生する頻度」「発生したときの損失時間」「現在の代替手段」を聞き取ると、要望を影響度で並べ替えられます。

「声が大きい人の要望」ではなく「事業インパクトの大きい課題」から着手できるようになり、開発リソースの投下効率が改善します。

成果3:訴求メッセージとターゲット設定の精度が上がる

購買・検討プロセスを丁寧に聞くと、ユーザー自身が使っている言葉(顧客語彙)が手に入ります。社内で使っている専門用語ではなく、この顧客語彙をそのままLPや広告文に使うことで、CTRやCVRが改善するケースが多くあります。

また「どの瞬間に検討を始めたか」というトリガーが分かれば、配信タイミングや獲得チャネルの見直しにも直結します。

成果4:解約・離反の予兆を早期に検知できる

継続率が落ちている場合、数値だけを見ても原因は分かりません。解約者・休眠ユーザーへのインタビューは、「期待していたことと実際のギャップ」がどこで生まれたかを特定する最短ルートです。

オンボーディングの説明不足なのか、想定していた業務に合わなかったのか、社内で使う人が増えなかったのか。原因の層が分かれば、打ち手も具体化します。

ユーザーインタビューが向かないケース

網羅性のために、あえて「使うべきでない場面」も明示します。以下に当てはまる場合は、インタビュー以外の手法を選んだほうが早く正確です。

  • 「A案とB案のどちらが選ばれるか」を数で決めたい:アンケートやA/Bテストが適切です。少人数の意見で多数決を取ると誤った結論になります。
  • 「操作でつまずく箇所」を特定したい:ユーザビリティテスト(実際に操作してもらう)のほうが確実です。インタビューでは「思い出せる範囲」しか出てきません。
  • 「将来この機能を使うか」を知りたい:人は未来の自分の行動を過大に見積もります。意向ではなく現在の代替行動を聞く設計に切り替えてください。
  • すでに答えが決まっており、承認材料が欲しいだけ:確証バイアスが働き、調査そのものが機能しません。

ユーザーインタビューの種類・手法一覧比較表

ユーザーインタビューには複数の型があり、目的とインタビュアーの習熟度によって選ぶべき型が変わります。ここでは「構造の自由度」「参加人数」「実施形式」の3軸で整理します。

構造化・半構造化・非構造化の比較表

まず、質問の決め方による3分類です。初めて実施するなら半構造化インタビュー一択と考えて問題ありません。

種類 進め方 メリット デメリット 適した場面 難易度
構造化インタビュー 決めた質問を全員に同じ順序で聞く 回答を比較しやすく分析が速い 想定外の発見が出にくい 大人数への傾向把握、複数拠点での実施
半構造化インタビュー(推奨) 骨子となる質問を用意し、回答に応じて自由に深掘り 比較性と発見の両立ができる 進行にある程度の慣れが必要 仮説検証+新規発見、ほぼ全てのケース
非構造化インタビュー テーマだけ決めて自由に対話 予想外のインサイトが出る 脱線しやすく分析工数が重い 新規事業の初期探索、専門家ヒアリング

デプスインタビューとグループインタビューの違い

次に参加人数による分類です。同じ「インタビュー」でも、1対1か複数人かで得られるデータの質がまったく変わります。

比較項目 デプスインタビュー(1対1) グループインタビュー(座談会)
参加人数 1名/回 4〜6名/回
所要時間 30〜90分 90〜120分
強み 深掘り・個人的/機微な話題に強い 参加者同士の相互作用でアイデアが広がる
弱み 1件あたりの工数が大きい 同調圧力で本音が出にくい
向くテーマ 購買の意思決定プロセス、解約理由、悩み コンセプト評価、ネーミング、価値観の幅を知る

BtoBのユーザーインタビューは、ほぼデプスインタビュー一択です。競合他社の担当者が同席する場では、業務上の課題を率直に話せないためです。

対面・オンライン・非同期(チャット/フォーム)の比較

実施形式の選択肢も広がっています。「深さ」と「集めやすさ」はトレードオフであることを踏まえて選びます。

形式 取得できる情報 1名あたり工数 協力ハードル 推奨シーン
対面 表情・間・手元の操作まで観察可能 大(移動時間含む) 高い 現場観察を伴う調査、重要顧客
オンライン(Web会議) 表情・声色・画面共有 標準。遠隔地・多拠点にも対応
非同期(チャット・フォーム型) テキストの回答(深掘りは限定的) 低い 母数を確保したい事前スクリーニング

実務では「非同期のフォームで広く集めて絞り込み、有望な方だけオンラインで深掘りする」ハイブリッド運用がもっとも費用対効果に優れます。

目的別・手法選択の早見表

迷ったときは、目的から逆算して手法を選んでください。

やりたいこと 推奨手法 推奨人数
まだ見えていない課題を探したい 半構造化+デプス 1セグメント6〜8名
立てた仮説の当たり外れを確かめたい 半構造化+デプス 1セグメント5〜6名
コンセプト案への反応の幅を知りたい グループインタビュー 4〜6名×2〜3グループ
解約・離反の理由を突き止めたい デプス(元ユーザー対象) 8〜12名
操作でつまずく箇所を見つけたい ユーザビリティテスト(併用) 5名

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そのまま使える質問項目一覧表50選

ここからは実務でそのまま流用できる質問例を、目的別に6カテゴリ・全50問で掲載します。すべてコピーして自社の対象テーマに置き換えるだけで使えるように、評価語を含まない中立的な表現に統一しています。

全問を使う必要はありません。60分のインタビューなら、深掘りの時間を確保するために12〜15問に絞るのが現実的です。

① アイスブレイク・導入(8問)

冒頭5〜10分は、相手に「評価される場ではない」と理解してもらう時間です。答えやすい事実確認から始め、心理的な安全性をつくることが目的で、ここで得た情報は分析にも使います。

No. 質問例 狙い
1 本日はお時間をいただきありがとうございます。まず簡単に自己紹介をお願いできますか。 属性の把握
2 現在のお仕事(役割)で、いちばん時間を使っている業務を教えてください。 文脈の理解
3 その業務には、どのくらいの期間携わっていますか。 習熟度の確認
4 一緒に業務を進めるメンバーは何名くらいですか。 組織規模の把握
5 今回のインタビューにご協力いただこうと思ったきっかけはありますか。 参加動機の把握
6 直近1週間で、その業務に関して印象に残った出来事を1つ教えてください。 具体エピソードの呼び水
7 普段お使いのツールやサービスを、思いつく順に挙げてください。 環境の把握
8 今日は率直なご意見を伺いたいので、否定的な内容もそのままお話しください。差し支えありませんか。 心理的安全性の確保

② 行動・利用シーンを深掘りする(12問)

ユーザーインタビューの中核はここです。意見や感想ではなく「実際にやったこと」を時系列で再現してもらうことで、記憶の曖昧さと美化を最小化できます。

No. 質問例 狙い
9 直近1ヶ月で[対象テーマ]に取り組んだ場面を1つ思い出してください。 具体場面の特定
10 その日は何曜日の何時ごろでしたか。場所はどこでしたか。 状況の固定
11 最初にやったことから順番に、手順を追って教えてください。 行動の再現
12 その時に使っていたデバイスやツールをすべて挙げてください。 利用環境の把握
13 途中で他の人に相談したり、確認したりしましたか。 関与者の特定
14 手が止まった瞬間、迷った瞬間はありましたか。 摩擦点の発見
15 そのとき、どうやって解決しましたか。 回避行動の把握
16 最初から最後までで、合計どのくらい時間がかかりましたか。 コストの定量化
17 同じことをする頻度はどのくらいですか(週◯回、月◯回)。 影響度の算出
18 うまくいった回と、うまくいかなかった回の違いは何でしたか。 成功条件の特定
19 この作業を始める前と後で、行動が変わったことはありますか。 変化の把握
20 その場面で、もっとも気を使ったことは何でしたか。 暗黙の制約の発見

③ 課題・不満を引き出す(10問)

「不満はありますか」と直接聞いても、多くの人は「特にない」と答えます。困った“場面”を1つに限定して尋ねると、具体的な発言が返ってきやすくなります。

No. 質問例 狙い
21 直近で「面倒だな」と感じた場面を1つだけ思い出して、詳しく話してください。 課題の具体化
22 その時、実際にはどう対処しましたか。 代替行動の把握
23 対処にかかった時間と、関わった人数を教えてください。 損失の定量化
24 同じことが起きたのは、それが初めてでしたか。 再現性の確認
25 その問題について、社内で誰かに相談しましたか。 意思決定経路の把握
26 解決のために試してみて、効果がなかった方法はありますか。 失敗した打ち手の把握
27 その状態が続くと、いちばん困るのは誰ですか。 ステークホルダー特定
28 仕方なく諦めていること、後回しにしていることはありますか。 諦められたニーズの発見
29 その課題が解決されたら、空いた時間で何に取り組みたいですか。 価値の言語化
30 今の状態に点数をつけるとしたら10点満点で何点で、その点数にした理由は何ですか。 評価と根拠の同時取得

④ ニーズ・期待値・価格感度を確認する(8問)

ここは購買判断に直結するパートです。「あったら使いますか」という仮定の質問は避け、現在の支払い実態や優先順位で確かめます。

No. 質問例 狙い
31 この課題の解決に、現在いくら(時間・費用)をかけていますか。 現状コストの把握
32 解決手段に求める条件を、優先順位の高い順に3つ挙げてください。 要件の序列化
33 「これがなければ導入しない」と言い切れる必須条件は何ですか。 必須要件の特定
34 逆に、なくても構わない条件はどれですか。 トレードオフの確認
35 月にどのくらい工数が減れば、投資に見合うと感じますか。 ROI基準の把握
36 導入を決めるとき、誰の承認が必要になりますか。 決裁プロセスの把握
37 過去に似たツールの導入を見送ったことがあれば、その理由を教えてください。 失注要因の把握
38 高すぎて検討外だと感じる金額と、安すぎて品質が不安になる金額はいくらですか。 価格感度(PSM的把握)

⑤ 競合・代替手段を把握する(6問)

競合は同カテゴリの製品とは限りません。「Excelと手作業」「そもそも何もしない」も強力な競合です。ここを押さえると差別化の軸が明確になります。

No. 質問例 狙い
39 同じ目的のために、他に検討した手段をすべて挙げてください。 比較対象の把握
40 最終的にその手段を選んだ決め手は何でしたか。 選定基準の把握
41 選ばなかった手段は、どこが引っかかりましたか。 非選択理由の把握
42 その手段の存在は、どこで知りましたか。 情報接点の把握
43 今使っている方法が使えなくなったら、次は何を使いますか。 代替可能性の確認
44 同じ職種の知人に薦めるとしたら、どう説明しますか。 顧客語彙の抽出

⑥ クロージング・次回への接続(6問)

終盤は聞き漏らしの回収と、継続的な関係づくりに使います。最後の5分に、その日いちばん重要な発言が出ることも珍しくありません。

No. 質問例 狙い
45 今日お話しした中で、補足しておきたいことはありますか。 聞き漏らしの回収
46 私が聞き忘れていそうな観点があれば教えてください。 盲点の発見
47 もし社内で改善提案をするとしたら、まず何を変えますか。 優先順位の再確認
48 今日の話題について、他にお話を聞くと良さそうな方はいらっしゃいますか。 紹介による母集団拡大
49 今後も追加でご協力いただける場合、どの形式が負担が少ないですか。 継続接点の設計
50 本日の内容を社内資料に匿名で引用してもよろしいですか。 利用許諾の確認

BtoBとBtoCで変わる質問の使い分け

同じ50問でも、BtoBとBtoCでは重点を置くカテゴリと配分が変わります。下表を目安に組み替えてください。

観点 BtoB BtoC
主な対象者 現場担当者・決裁者・情報システム部門 エンドユーザー個人
重視する軸 業務プロセス・社内合意形成・ROI 生活シーン・感情・体験の記憶
厚くすべきカテゴリ ④ニーズ・価格感度/⑤競合 ②行動・利用シーン/③課題・不満
推奨人数 役割別に5〜10名 セグメント別に10〜15名
推奨時間 45〜60分 30〜45分
謝礼の考え方 業務時間内のため商品券・寄付・レポート提供も有効 デジタルギフトなど即時性の高いものが有効

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ユーザーインタビューの進め方5ステップ

ここからが本記事の中心となる、ユーザーインタビューの進め方です。実務では次の5ステップで進めます。企画開始から分析完了まで、標準的な所要期間は3〜4週間です。

5ステップ全体マップと標準工数

まず全体像を把握してください。もっとも時間がかかるのはステップ2のリクルーティングで、ここを甘く見積もるとスケジュールが崩れます。

ステップ やること 標準所要 主な成果物
STEP1 目的とリサーチクエスチョンの設定 2〜3日 リサーチ計画書(1枚)
STEP2 対象者のリクルーティング 1〜2週間 スクリーナー・対象者リスト
STEP3 質問項目・インタビューガイド設計 2〜3日 インタビューガイド
STEP4 実施前の準備・同意取得 1〜2日 同意書・機材チェックリスト
STEP5 本番の実施 1名30〜60分×人数 録音・逐語録・メモ
(STEP6) 分析・レポート化 3〜5日 分析レポート

初回は各工程が想定の1.5倍程度かかると見ておくと安全です。特に日程調整は「候補日を3つ提示して先方に選んでもらう」形式にすると往復回数が減り、平均2〜3日短縮できます。

【STEP1】目的とリサーチクエスチョンを設定する

ユーザーインタビューの成否の8割は、この最初のステップで決まります。目的が曖昧なまま進むと、対象者選定も質問設計も全部ぶれるためです。

リサーチ目的を1文で言語化する型

目的は必ず1文に収めてください。おすすめの型は次のとおりです。

「[対象セグメント]の[改善したいKPI・課題]を改善するために、[明らかにしたい行動・心理]を解明する」

例:「初回契約から3ヶ月以内に解約した中小企業の管理部門担当者の継続率を改善するために、導入直後に社内展開が止まった原因を解明する」

この1文が書けない場合、そもそも調査の準備が整っていません。関係者全員がこの1文に同意するまで、次に進まないことを強くおすすめします。

良いリサーチクエスチョン(RQ)と悪いRQの見分け方

リサーチクエスチョンとは、インタビューを通じて答えを出したい「問い」のことです。対象者に直接投げる質問文とは別物である点に注意してください。

悪いRQ なぜ悪いか 良いRQへの書き換え
ユーザーは満足しているか Yes/Noで終わり、行動につながらない 継続利用者と離脱者では、導入初月の使い方がどう違うか
この新機能は売れるか インタビューで答えが出ない問い 現在ユーザーはこの業務を何で代替し、どこに不満を持っているか
UIは使いやすいか 主観評価しか得られない 初回設定を完了するまでに、どこで手が止まったか

良いRQは「行動・プロセス・比較」を含み、答えが出れば次の打ち手が決まるという共通点があります。1回の調査でRQは3〜5個に絞ってください。

仮説と検証ポイントを事前に書き出す

RQごとに「現時点で自分たちはこう考えている」という仮説を書き出します。仮説を明文化しておくと、それが崩れた瞬間が最大の学びになります。

逆に仮説を書かずに臨むと、「なんとなく良い話が聞けた」で終わり、意思決定に使えません。仮説は外れて構いません。むしろ全部当たった調査は、対象者選定か質問設計が誘導的だったと疑うべきです。

【STEP2】対象者をリクルーティングする

誰に聞くかが、得られる情報の9割を決めます。「協力してくれる人」ではなく「答えを持っている人」に会うことが原則です。

スクリーニング条件は5〜7個に絞る

対象者条件は、多すぎても少なすぎても失敗します。3つ以下だと対象がばらつき、10個以上だと現実的に集まりません。5〜7個が実務上のバランスです。

例:「従業員100〜500名のBtoB企業」「マーケティング部門所属」「直近6ヶ月以内にMAツールの比較検討をした」「予算決裁に関与している」「導入を見送った経験がある」の5条件。

条件は属性(誰か)だけでなく、行動(何をしたか)を必ず含めるのがコツです。属性だけだと、話すべき経験を持たない方が集まってしまいます。

募集ルート6種の比較

集め方によって、コスト・スピード・回答の質が大きく変わります。予算と締切から逆算して選んでください。

募集ルート メリット デメリット 1名あたり費用 所要期間
自社顧客に直接依頼 文脈を共有済みで話が早い 好意的な意見に偏りやすい 謝礼のみ 1〜2週間
リサーチパネル会社 細かい条件指定が可能 費用が高い/協力慣れした回答者 15,000〜30,000円 1〜2週間
マッチングサービス 専門職・希少層に短期で会える 単価が読みにくい 10,000〜20,000円 数日〜1週間
SNS・自社メディア告知 低コストで拡散できる 条件に合う人が集まる保証がない 謝礼のみ 1〜3週間
クラウドソーシング 短期で人数を確保しやすい 回答品質のばらつきが大きい 3,000〜10,000円 数日〜1週間
知人・社内紹介 最速・低コスト 忖度が入りやすく客観性を欠く 謝礼のみ 数日

どのルートでも、応募フォームの段階で行動条件をスクリーニング設問として入れておくと、当日の「話が違った」を防げます。

謝礼の相場と支払い方法

謝礼は「時間の対価」として明確に設定します。相場はBtoC 30分で3,000〜5,000円、60分で5,000〜10,000円。BtoBの専門職なら60分で10,000〜30,000円が目安です。

支払い方法は、近年デジタルギフト(Amazonギフトカード等のコード送付)が主流です。住所収集が不要で当日その場で渡せるため、事務コストと個人情報リスクを同時に下げられます。

なお、BtoBでは謝礼を受け取れない企業もあります。その場合は「調査結果のサマリーレポート提供」「寄付」への振り替えを用意しておくと、辞退を防げます。

何人に聞けば十分か(飽和の考え方)

もっとも多い質問が「何人にインタビューすべきか」です。ここは俗説が多い領域なので、研究知見をもとに整理します。

Guest, Bunce & Johnson(2006)の実証研究では、比較的均質な母集団・限定的なテーマであれば12件程度で新しいテーマが出なくなる(飽和する)とされ、主要テーマの大半は最初の6件で出現したと報告されています。

一方、Nielsen Norman Groupは「探索的な調査では5人では少なすぎることが多い」と指摘しており、Griffin & Hauserの推定では20〜30件のインタビューで顧客ニーズの90〜95%が明らかになるとされています。

実務上の目安は次のとおりです。

状況 推奨件数 考え方
仮説が明確・母集団が均質 1セグメント5〜6名 主要テーマの把握には足りる
標準的な課題探索 1セグメント8〜12名 飽和の到達を狙える水準
探索的・母集団が多様 合計20〜30名 ニーズの網羅を狙う場合
セグメントが複数ある セグメント数×5〜6名 比較には各群の最低件数が必要

重要なのは件数そのものではなく、「新しい発見が出なくなったか」を毎回チェックしながら進めることです。5名終えて毎回新しい話が出るなら、追加すべきというサインです。

▼謝礼の設計とデジタルギフト活用を詳しく知りたい方はこちら
👉 Interviewzのデジタルギフト付きアンケート資料

【STEP3】質問項目とインタビューガイドを設計する

STEP1で決めたRQを、対象者が答えられる日常の言葉に翻訳する工程です。RQをそのまま質問文にしてはいけません。

発見型・検証型・評価型の3分類で組み立てる

質問は目的別に3種類あります。1回のインタビューで3種類を混在させると焦点がぼやけるため、比率を決めて設計します。

種類 目的 質問例 推奨比率(課題探索時)
発見型 未知の課題・ニーズを見つける 直近で困った場面を1つ詳しく話してください 60%
検証型 立てた仮説の真偽を確かめる その作業は毎回どなたが担当していますか 30%
評価型 既存の満足度・改善点を測る 直近の利用を10点満点で採点し、理由を教えてください 10%

60分インタビューの時間配分テンプレート

ガイドには必ず時間の目安を書き込んでください。これがないと導入で話しすぎて本題が消化不良になります。

時間 内容 目的
0〜5分 挨拶・目的説明・同意確認 安心感と録音許諾
5〜12分 アイスブレイク・属性確認 ラポール形成
12〜25分 行動・利用シーンの再現 事実の収集
25〜45分 課題・ニーズの深掘り(プローブ中心) 本音の抽出
45〜55分 仮説検証・優先順位の確認 意思決定材料の獲得
55〜60分 聞き漏らし確認・謝礼・次回接続 クロージング

NG質問→OK質問の書き換え例

質問設計の原則は「1問1意」「評価語ゼロ」「過去の行動を聞く」の3つです。以下の書き換え例をチェックリストとして使ってください。

NG質問 問題点 OK質問
使いやすいですか 評価語・誘導・Yes/No 直近で使った時の操作を、最初から順に話してください
料金とサポートはどう思いますか 1問に論点が2つ 料金で迷った瞬間はありましたか/サポートで助かった場面はありましたか(分割)
この機能があったら使いますか 未来の意向は当てにならない 今その目的のために、代わりに何を使っていますか
ご不満な点はありますか 抽象的で「特にない」を誘発 直近1ヶ月で手間だと感じた場面を1つ挙げてください
やはり価格が決め手でしたよね 誘導・同意の押し付け 最終的に決め手になった要素を、重要な順に挙げてください
一般的にどう思われますか 本人の経験から離れる ご自身の場合はどうでしたか

▼質問設計の考え方を体系的に学びたい方はこちら
👉 ヒアリングシート作成ガイド(マーケティングリサーチ編)

【STEP4】実施前の準備とインフォームドコンセント

準備不足は当日そのまま損失になります。録音に失敗したインタビューは、実質的にやり直しが利きません。

機材・ツールのチェックリスト

  • □ インタビューガイド(印刷またはサブモニター表示)
  • □ 録音機材を2系統(PC録音+スマホのICレコーダーアプリ)
  • □ 文字起こしツール(Notta、Whisper など)の動作確認
  • □ Web会議ツールの録画設定と保存先の確認
  • □ ネットワーク・電源・イヤホンの確認
  • □ 同意書または口頭スクリプト
  • □ 謝礼(デジタルギフトのコード発行を事前に済ませる)
  • □ 記録係用のメモテンプレート
  • □ 対面の場合は飲み物・座席配置(対面ではなく90度の角度が話しやすい)

録音を2系統にしておくのは、片方が失敗しても救済できるようにするためです。この一手間だけで、事故率は大幅に下がります。

インフォームドコンセントで必ず伝える5項目

同意取得は形式ではなく、相手が安心して率直に話せる状態をつくるための実務です。次の5点を冒頭で伝えます。

  1. 調査の目的(何のために聞くのか)
  2. 録音・録画の有無と利用範囲(社内分析のみか、引用の可能性があるか)
  3. 個人情報の取り扱い(匿名化・保管期間・削除方法)
  4. 回答は任意であり、途中で中断できること
  5. 評価・営業の場ではないこと(既存顧客の場合は特に重要)

特に4番目と5番目を明言するかどうかで、後半の発言の率直さが変わります。「答えたくない質問は飛ばして構いません」と最初に伝えておくことをおすすめします。

パイロットインタビューで設計を検証する

本番の前に、社内メンバーや条件の近い1名でリハーサルを行ってください。ここで判明するのは主に次の3点です。

1つ目は時間超過です。設計上60分でも、実際に話すと80分かかることは普通にあります。2つ目は伝わらない用語で、社内では当たり前の言葉が相手に通じないケースが必ず出ます。

3つ目は順序の不自然さです。話の流れとして前後させたほうが自然な質問が見つかります。パイロット1件で、本番の質は明確に上がります。

【STEP5】本番を実施して深掘りする

当日はガイドを守ることよりも、相手の話の中で「具体が語られた瞬間」を逃さないことを優先します。

進行の基本原則は「話す2割・聞く8割」

インタビュアーが話す時間は全体の2割以下に抑えます。相手が沈黙している時間は「考えている時間」であり、埋める必要はありません。

また、相槌は「なるほど」「そうですよね」といった評価を含む言葉ではなく、「はい」「それで、どうなりましたか」など中立的な促しに置き換えると、同調圧力を与えずに済みます。

プローブ質問で3層まで掘り下げる

1つの回答に対して、最低3回は掘り下げます。プローブ(探り)質問の代表例は次の3つです。

①具体化:「たとえば直近だと、どんな場面でしたか」/②理由:「そのとき、なぜそうしようと思ったのですか」/③影響:「その結果、どうなりましたか」。

この3段を回すだけで、抽象的な感想が具体的なエピソードに変わります。「〜だと思います」で終わった回答は、まだ1層目だと考えてください。

2人体制での役割分担

可能であればモデレーター(進行)と記録係の2人体制が理想です。モデレーターは対話に集中し、記録係は発言メモに加えて「深掘りしたい箇所」をリアルタイムで拾います。

終了10分前に記録係から「この点を追加で聞きたい」と共有する運用にすると、聞き漏らしが激減します。1人で実施する場合は、メモは最小限にして録音に頼り、対話に集中してください。

本音を引き出す8つのコツ

手順どおりに進めても、表面的な回答しか得られないことがあります。ここでは発言の質を一段引き上げるための実践テクニックを8つ、それぞれ独立して解説します。

コツ1:評価ではなく「行動の再現」を聞く

もっとも効果が大きく、もっとも徹底されていないのがこれです。人は自分の意見を語るとき無意識に整えますが、実際にやったことを順に語るときは整えようがありません。

「このサービスをどう思いますか」ではなく「先週使ったときの手順を最初から教えてください」と聞く。それだけで、得られる情報の密度が変わります。

具体的には「いつ」「どこで」「誰と」「何を使って」「その結果どうなったか」の5点を必ず埋めるよう意識してください。この5点が揃った発言は、そのまま社内でのエビデンスとして使えます。逆に、5点が埋まらない発言は「一般論」であり、意思決定の根拠にはなりません。

コツ2:沈黙を3〜5秒待つ

インタビュー初心者がもっともやりがちなのが、沈黙が怖くて次の質問を被せてしまうことです。これによって、相手が本当に考え始めた瞬間の答えが失われます。

相手が黙ったら、心の中で3〜5秒数えてください。この数秒で出てくる言葉は、用意された回答ではなく、その場で考えた本音である確率が高いという特徴があります。

オンラインの場合は、通信の遅延と沈黙が区別しづらいため、頷きや軽い相槌で「聞いていますよ」というシグナルを出しながら待つと自然です。慣れないうちは、手元のタイマーで実際に5秒を体感しておくと感覚がつかめます。

コツ3:ミラーリングとバックトラッキングで続きを促す

ミラーリングは、相手の発言の最後の数語をそのまま繰り返す技法です。「それで面倒になってしまって」→「面倒になってしまって……?」と返すだけで、相手は自然に続きを話し始めます。

バックトラッキングは、相手の話を要約して返す技法です。「つまり、月末だけ手作業が発生して、それが2日かかっているということですね」と返すと、認識のズレをその場で修正できるうえ、相手は「理解されている」と感じて話しやすくなります。

ただし要約の際に自分の解釈を混ぜないことが鉄則です。「つまり不満だったということですね」と評価を加えると、それが誘導になります。事実だけを返してください。

コツ4:ラダリング法で価値観まで上る

ラダリング法は、「属性→ベネフィット→価値観」の順に、はしごを上るように抽象度を上げていく質問技法です。マーケティングの訴求軸を見つけたいときに特に有効です。

例:「自動連携機能が良い」(属性)→「それがあると何が良いのですか」→「転記作業がなくなる」(ベネフィット)→「転記がなくなると、どう変わりますか」→「ミスを気にせず月末を迎えられる」(価値観)。

最終的に得られた「ミスを気にせず月末を迎えられる」という言葉こそが、広告文やLPで使うべきメッセージです。機能の説明では動かない人が、この一言で動くことがあります。

コツ5:5Whys法で原因の構造を掘る

ラダリングが「上に上る」技法なのに対し、5Whysは「下に掘る」技法です。問題の表層から根本原因へ向かって「なぜ」を重ねます。

例:「入力が終わらない」→なぜ→「項目が多い」→なぜ→「全部必須になっている」→なぜ→「後工程が困るから」→なぜ→「後工程で確認する手段がない」。ここまで来ると、解くべき問題が「入力項目の削減」ではなく「後工程の確認手段の提供」だったと分かります。

注意点は、「なぜ」を機械的に連呼すると詰問に聞こえることです。「差し支えなければ、その背景をもう少し伺えますか」といった柔らかい言い換えを織り交ぜてください。

コツ6:4つのバイアスを自覚してコントロールする

インタビューデータの信頼性を下げる要因は、ほぼバイアスに集約されます。完全には消せないため、「どこで発生しているかを把握しておく」ことが現実的な対策です。

誘導バイアス(インタビュアーの期待が伝わる)

「やはり〜ですよね」「〜で困っていませんか」といった質問文、あるいは頷きの強弱で、相手は「こう答えてほしいのだろう」と察します。対策は質問文から評価語を排除し、相槌を中立に保つことです。

社会的望ましさバイアス(良く見せたい心理)

健康、学習、業務の丁寧さなど、「そうあるべき」とされる領域では実態より良い回答が出ます。対策は、意見ではなく直近の実際の行動と頻度を聞くこと。「週に何回運動していますか」ではなく「先週の運動を全部挙げてください」と聞きます。

確証バイアス(自分の仮説に合う話だけ拾う)

インタビュアー側の問題です。仮説に合う発言だけをメモし、合わない発言を「例外」として処理してしまいます。対策は仮説を事前に書き出しておき、分析時に「反証となる発言」を意図的に探すことです。

想起バイアス(記憶は書き換わる)

過去の出来事は、時間が経つほど都合よく再構成されます。「直近1ヶ月以内」「前回」など期間を区切って聞くことで精度が上がります。可能であれば、当時の画面や記録を見ながら話してもらうとさらに正確になります。

コツ7:オープン質問とクローズド質問を使い分ける

すべてをオープン質問にすればよいわけではありません。オープン質問は情報の幅を広げ、クローズド質問は事実を確定させるという役割の違いがあります。

基本は「オープンで広げ、クローズドで固める」順序です。「その作業について教えてください」(オープン)→「それは毎月発生しますか」(クローズド)→「毎月のどのタイミングですか」(オープン)と交互に使うと、話が広がりすぎず、かつ浅くもなりません。

クローズド質問を連発すると尋問のようになるため、1つの事実確認のあとには必ずオープン質問を挟むとリズムが保てます。

コツ8:終了直後10分で「ホットな気づき」を書き残す

インタビュー終了直後は、記憶がもっとも鮮明な時間帯です。この10分を確保できるかどうかで、分析の質が決まります。

書き残すのは3つだけで構いません。①今日いちばん驚いた発言、②仮説と違った点、③次回のインタビューで変えたい質問。この3点を毎回積み上げると、後半のインタビューほど精度が上がるという好循環が生まれます。

スケジュールを組む際は、インタビューを連続で詰め込まず、各回のあいだに最低15分の空きを作っておいてください。

▼回答率と回答の質を高める設計ノウハウをまとめて知りたい方はこちら
👉 ユーザーからの回答率の高いアンケートの作り方【6つのコツ】

インタビュー後の分析・活用方法

ユーザーインタビューは、実施して終わりではありません。集めた発言を構造化し、意思決定に接続するところまでが本体です。ここでは5つのステップで解説します。

STEP A:逐語録を作成して発言データを整える

まず録音から逐語録(トランスクリプト)を作成します。以前は1時間の音声に4〜6時間かかる作業でしたが、現在はNottaやWhisperなどの文字起こしツールで数分〜十数分で下書きが完成します。

自動生成されたテキストは固有名詞や専門用語の誤変換が残るため、録音を1.5倍速で聞きながら30〜40分程度で修正するのが標準的な流れです。

ここで重要なのは、要約せずに発言そのままを残すことです。要約した時点で解釈が入り、後から別の視点で読み直すことができなくなります。

STEP B:コーディングで発言にラベルを付ける

逐語録を読みながら、意味のあるまとまりごとに短いラベル(コード)を付けていきます。「料金の不透明さ」「社内説明の負担」「他部署への展開が止まる」といった具合です。

ラベルは10〜15文字程度の名詞句にすると、後のグルーピングがしやすくなります。1件のインタビューで30〜60個のラベルが付くのが一般的です。

複数人で分析する場合は、最初の1〜2件を全員で一緒にコーディングし、粒度を揃えてから分担してください。粒度がバラバラだと、後工程で使い物になりません。

STEP C:KJ法・親和図でテーマを構造化する

付けたラベルを、意味の近いものどうしでグループにまとめます。KJ法(親和図法)と呼ばれる手法で、MiroやFigJamなどのオンラインホワイトボードを使うと共同作業が容易です。

手順は、①全ラベルを並べる→②似ているものを近くに寄せる→③グループに見出しを付ける→④グループ間の関係(原因・結果・対立)を線で結ぶ、の4段階です。

この「グループに見出しを付ける」瞬間が、インサイトが生まれるポイントです。既存の言葉が当てはまらないグループが出てきたら、それが新しい発見である可能性が高いといえます。

STEP D:ペルソナ・カスタマージャーニーに反映する

構造化した結果は、既存のマーケティング資産に接続してこそ価値が出ます。もっとも接続しやすいのがペルソナとカスタマージャーニーマップです。

ペルソナには、インタビューで得た実際の発言をそのまま引用として入れると、社内での納得感が大きく変わります。カスタマージャーニーには、各フェーズで観測された「手が止まった瞬間」を配置します。

これにより、「どのフェーズにどんな施策を打つべきか」が一枚の図で共有できる状態になります。

STEP E:レポート化して意思決定につなげる

最後にレポートにまとめます。枚数は10〜15枚に収めるのが、関係者が読み切れる現実的なボリュームです。構成は次のとおりです。

  1. 目的とリサーチクエスチョンの再掲(1枚)
  2. 実施概要(対象者条件・人数・時期・手法/1枚)
  3. 主要発見トップ5(各発見に代表発言を3件添える/5枚)
  4. 仮説の検証結果(当たった仮説・外れた仮説を明示/1〜2枚)
  5. セグメント別の傾向比較(1〜2枚)
  6. ネクストアクション提案(優先順位・担当・KPI/1〜2枚)
  7. 付録(発言一覧・逐語録リンク)

ポイントは「外れた仮説」を必ず載せることです。ここが最大の学びであり、これを省くとレポートが「思っていたとおりでした」という報告書に堕してしまいます。

生成AIを活用した質問設計と分析

生成AIは、ゼロから作るより「叩き台を作る」「抜け漏れを指摘させる」用途で効果を発揮します。そのまま使えるプロンプトを3つ紹介します。

①質問項目のドラフト作成
「あなたはUXリサーチャーです。[ペルソナ]に対して[リサーチクエスチョン]を明らかにする半構造化インタビューを60分で実施します。過去の行動を聞くオープン質問を中心に、質問案を15個提案してください。各質問に狙いを1行で添えてください。」

②NG質問のチェック
「以下の質問リストを、①評価語が含まれていないか、②1問に論点が2つ以上ないか、③未来の意向を尋ねていないか、の3観点でレビューし、問題のある質問は改善案を提示してください。」

③逐語録からのコード抽出
「以下はユーザーインタビューの逐語録です。発言を要約せず、課題・ニーズ・利用文脈のいずれかに分類したうえで、15文字以内のラベルを付けて一覧化してください。発言の引用元となる原文も併記してください。」

ただし、AIの出力を最終成果物にしないことが重要です。特に分析では、AIは平均的で無難なまとめを出す傾向があり、もっとも価値のある「例外的な発言」を捨ててしまいます。必ず人間が原文にあたって確認してください。

また、個人情報を含む逐語録を外部AIサービスに投入する際は、匿名化と自社のセキュリティポリシー確認を忘れないようにしてください。

▼インタビュー結果を社内共有資料にまとめる手順を知りたい方はこちら
👉 ヒアリング&診断コンテンツの実例集

実践事例:ユーザーインタビュー活用シーン3選

ここでは、ユーザーインタビューが実際にどう成果へつながるのかを、代表的な3つのシーンで解説します。

事例1:新規SaaSのPMF検証(プロダクト開発)

状況:新規プロダクトのβ版をリリースしたものの、無料トライアルからの有料転換率が伸び悩んでいた企業。定量データでは「登録後3日以内の離脱が7割」という事実までは判明していました。

実施内容:離脱ユーザー8名、継続ユーザー6名の計14名に、半構造化のデプスインタビューを実施。両群に同じ質問を投げ、初週の行動の違いを比較する設計にしました。

発見:継続群は全員が初週のうちに「自社データを1件でも取り込んでいた」のに対し、離脱群はサンプルデータのまま操作を終えていました。離脱の原因は機能不足ではなく、「自分ごと化する最初の一歩」の設計不足だったと判明します。

打ち手:オンボーディングを「機能ツアー」から「自社データを1件登録するまでの誘導」に変更。定量調査だけでは、この打ち手には到達できませんでした。

事例2:既存サービスの解約率改善(カスタマーサクセス)

状況:契約から6〜9ヶ月での解約が集中していたBtoBサービス。解約アンケートの回答は「コストが合わなかった」が最多でしたが、値下げ検討の前に理由を掘ることになりました。

実施内容:解約企業10社の担当者にインタビューを実施。「コストが合わない」という回答に対して、5Whysで掘り下げることを全ケースで徹底しました。

発見:実際には「金額が高い」のではなく、「利用者が導入担当者1名から広がらず、社内で費用対効果を説明できなくなった」ことが共通構造でした。つまり課題は価格ではなく、社内展開の支援不足です。

打ち手:導入3ヶ月目に「社内展開レビュー」を標準提供し、利用状況レポートを担当者が上長に提出できる形式に変更。値下げをせずに継続率を改善できました。

事例3:採用・人事領域での定着率向上(HR)

状況:派遣スタッフの早期離職が課題となっていた人材サービス企業。定期面談は実施していたものの、面談では「特に問題ありません」という回答が大半という状態でした。

実施内容:面談形式を見直し、「困りごとの有無」を聞くのではなく「直近1週間の業務の流れを時系列で話してもらう」形式に変更。あわせて、事前に非同期のフォームで簡易ヒアリングを行い、気になる回答があった方を優先的に面談する運用にしました。

発見:離職につながる不満は、業務内容ではなく「誰に聞けばいいか分からない状態が続くこと」に起因していました。行動の再現を聞いたことで初めて、質問できずに手が止まる時間が可視化されたのです。

打ち手:初日に相談先を明示する運用と、就業2週目の定型ヒアリングを追加。「問題ありません」という回答の裏側を可視化したことが転換点になりました。

▼対面ヒアリングの自動化で定着率を高めた取り組みを詳しく知りたい方はこちら
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ユーザーインタビューを効率化する「Interviewz(インタビューズ)」

ここまで解説してきた進め方は、Excelと会議ツールだけでも実行できます。ただし実務では、「募集フォームの作成」「回答データの集計」「テンプレートの再利用」に想像以上の工数がかかります。

ヒアリングDXソリューション「Interviewz(インタビューズ)」は、この周辺工数をノーコードで圧縮するためのサービスです。

Interviewzでできること

Interviewzは、タップ・クリック形式のヒアリングフォームをノーコードで作成し、回答データを一元管理できるWebサービスです。最短1日で利用を開始できます。

ユーザーインタビューの文脈では、①対象者を集めるスクリーニングフォーム、②非同期の事前ヒアリング、③インタビュー後のフォローアンケートという3つの場面で活用されています。

ユーザーインタビュー運用にInterviewzが向いている5つの理由

数あるツールの中でInterviewzが適している理由を、5つの観点に分けて解説します。

理由1:目的別テンプレートで質問設計の迷いがなくなる

発見型・検証型・評価型といった目的別、および営業・マーケティング・人事といった業務別のテンプレートを標準搭載しています。ゼロから質問を考える必要がなく、自社のテーマに置き換えるだけで設計が完了します。

一度作った質問セットは保存して再利用できるため、2回目以降のインタビュー準備は大幅に短縮されます。

理由2:スマホ最適化された応募フォームでリクルーティング負担が減る

対象者募集でもっとも手間がかかるのが、条件に合う方を絞り込むスクリーニングです。Interviewzなら分岐条件付きのフォームをノーコードで作成でき、条件外の方には自動で辞退の案内を出すといった設計も可能です。

タップ形式のUIで離脱が起きにくく、スマホからの応募完了率を高く保てる点も特徴です。

理由3:対面・オンラインの両方を同じワークフローで運用できる

タブレットを使った対面ヒアリングと、URLを送るだけのオンラインヒアリングを、同じ質問セット・同じデータベースで運用できます。

展示会やイベントでの対面ヒアリングと、後日のオンラインインタビューを1つのデータとして串刺しで分析できるため、チャネルごとに集計が分断されません。

理由4:回答データの一元管理と外部システム連携

集まった回答は属性別に自動集計され、セグメント比較がワンクリックで確認できます。CSVでの書き出しにも対応しています。

さらにHubSpot・Salesforce・Googleスプレッドシートとノーコードで連携できるため、インタビュー対象者の情報を既存の顧客データベースに自動で反映させる運用が可能です。

理由5:ノーコードで誰でも運用でき、属人化しない

HTMLやCSSの知識は不要で、ドラッグ&ドロップで質問の並べ替えや分岐設定ができます。エンジニアや外部制作会社への依頼が不要になるため、思いついたその日に質問を修正できます。

結果として、「リサーチができる人が1人しかいない」という属人化を解消し、チーム全体でユーザーインタビューを回せる体制がつくれます。

導入によって得られた成果

これまでのBtoB/BtoC企業への支援を通じて、リード数268%向上、ヒアリングコスト90%削減、サポートコスト半減といった成果が生まれています。

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よくある質問(FAQ)

Q1. ユーザーインタビューは何人に実施すれば十分ですか?

A. 母集団の均質さとテーマの広さによって変わります。仮説が明確で母集団が均質なら1セグメント5〜6名でも主要な傾向はつかめますが、探索的な調査では不足しがちです。

研究知見では、限定的なテーマなら12件程度で飽和に達するとされ、広範なニーズ探索では20〜30件で顧客ニーズの9割以上が把握できるという推定もあります。実務では「新しい発見が出なくなったか」を毎回チェックし、出続けるなら追加するのが正解です。

Q2. アンケートとユーザーインタビュー、どちらを先に行うべきですか?

A. 目的によって順番が変わります。未知の課題を探索したい初期段階では「インタビュー(定性)で仮説をつくり、アンケート(定量)で裏付ける」順が王道です。

すでに仮説がある場合や、施策の効果を測りたい場合は「アンケートで全体傾向をつかみ、外れ値の回答者にインタビューする」順が効率的です。どちらか一方ではなく、往復させることで精度が上がります。

Q3. 初心者はどの手法を選べばよいですか?

A. 半構造化インタビュー×1対1(デプス)の組み合わせをおすすめします。骨子となる質問を10〜15問用意しておけば進行に困らず、それでいて気になった発言をその場で深掘りできます。

グループインタビューは進行難易度が高く、非構造化インタビューは分析工数が重いため、いずれも慣れてからの選択肢と考えてください。

Q4. 誘導質問になっていないか不安です。どう確認すればよいですか?

A. 次の3点をチェックしてください。①「便利」「良い」などの評価語が入っていないか、②1問に論点が2つ以上含まれていないか、③未来の意向を尋ねていないか。

迷ったら、過去の具体的な行動を尋ねる形に書き換えるのが最も確実です。「便利だと思いますか」→「先月実際に使った機能を3つ挙げてください」のように変換します。生成AIに質問リストのレビューを依頼するのも有効です。

Q5. インタビュー結果を社内でうまく共有するコツは?

A. 「目的→主要発見→根拠となる発言→ネクストアクション」の4ブロック構成にまとめてください。各発見には必ず代表的な生の発言を3件添えると、説得力が段違いになります。

枚数はスライド10〜15枚に収めると、関係者が短時間で読み切れます。また、「外れた仮説」を明示することで、報告書ではなく学習資料として機能します。

Q6. 対象者が集まりません。どうすればよいですか?

A. 順に次を見直してください。①スクリーニング条件が多すぎないか(5〜7個が目安)、②謝礼が相場に対して低くないか、③依頼文で所要時間と目的が明確か、④日程候補が少なすぎないか。

特に効果が大きいのは依頼文の改善です。「30分」「オンライン」「録音は社内分析のみ」「謝礼あり」と具体的に書くだけで、応諾率は明確に上がります。それでも集まらない場合は、募集ルートを複数併用してください。

Q7. オンラインと対面では、得られる情報に差がありますか?

A. 深掘りの質そのものに大きな差はありませんが、観察できる情報量には差があります。対面では手元の操作、表情の細かな変化、周囲の環境まで観察できます。

一方でオンラインは、移動時間がないため協力を得やすく、画面共有で実際の操作を見せてもらえるという利点があります。実際の画面を操作しながら話してもらえば、オンラインでも十分な深さに到達できます。

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まとめ|次のアクション

ユーザーインタビューは、特別な才能ではなく「設計」と「型」で再現できる技術です。本記事の要点を整理します。

  • 目的は1文で言語化する:ここが曖昧だと、対象者選定も質問設計もすべてぶれます。
  • 誰に聞くかが9割:スクリーニング条件は属性と行動を組み合わせ、5〜7個に絞ります。
  • 意見ではなく行動を聞く:「どう思うか」ではなく「実際に何をしたか」を時系列で再現してもらいます。
  • 質問は1問1意・評価語ゼロ:未来の意向ではなく、現在の代替行動を尋ねます。
  • 人数は「新しい発見が止まったか」で判断:均質なら5〜6名、探索的なら12〜30名が目安です。
  • 分析まで含めて設計する:逐語録→コーディング→KJ法→レポートまでを最初から工数に組み込みます。
  • 外れた仮説こそ最大の学び:レポートに必ず明記してください。

まず取り組むべき最初の一歩は、「リサーチ目的を1文で書き、質問を12問に絞ったインタビューガイドを作ること」です。完璧な設計を目指すより、1件実施して修正するほうが確実に前に進みます。

以下の資料は、その最初の一歩を短縮するためにご活用ください。

▼質問設計をゼロから作らずに始めたい方はこちら
👉 ヒアリングシート/アンケートテンプレート一覧

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